『 いとしい人 ― (5) ― 』
***** お願い *****
この拙作は 原作『ヨミ編』 を 熟読している、という
前提で書いています。 スルーした あれやら これやら のエピソードは
どうぞ各自脳内補完してくださいますよう お願いします <m(__)m>
・・・ ガタン ゴン ・・・
もうもうとした土埃が やっと収まった。
薄暗い空洞は ますます暗くなり視界はほとんど利かない。
ガ ・・・ ガラ ガラ
瓦礫の一部が盛り上がり巨躯の赤い服が 現れた。
彼は用心深く岩石や瓦礫を押しやり投げ捨て 少しは安全な空間を作った。
そして もう一度周囲を確認してから 自分の足元に向かって
声をかけた。
「 ― 大丈夫か 003 」
ガサ ガサ ガサ ・・・
細かい瓦礫を掻き分けもごもごしている金色のアタマがみえた。
「 ・・・ ふ ・・・う ええ な なんとか・・・
005が庇ってくれたから 潰れなかったみたい・・・ 」
「 そうか よかった。 ほれ 」
ザザ。 巨人は金髪を引っぱりだし 瓦礫の上に立たせた。
「・・・ ん ・・・ わ ・・・ ひどく崩れたのね・・・
! ドルフィン号は?? み 皆は ? 」
ずざざざざざざ −−−−−
瓦礫の山から見覚えのある色彩が 見えてきた。
「 あ ドルフィン号ね よかった〜〜 」
「 ・・・ ああ。 皆 無事だ 安心しろ 」
「 吾輩も無事だぞう〜〜 」
岩石が喋りだし 次の瞬間にはスキン・ヘッド氏になった。
「 後ろの方に 008がいたぜ。 」
「 アイヤ〜〜〜 土中はワテの領域アルね〜〜 」
ドジョウ髭の料理人は 悠々と瓦礫を溶かし現れた。
「 皆 無事だな 」
「 え でも ジョー・・・? 」
シュ ・・・ 半分以上姿を現した機体の上部ハッチが開いた。
「 ! ジョ・・・ いえ 009! 002も〜〜〜 」
「 よ。 フラン〜〜 」
赤毛がひょこん、と現れ 陽気な声をあげた。
「 005 003。 無事だね 」
「 ジョー ・・・ あ。 」
フランソワーズの笑顔が しゅ ・・・っと萎んだ。
彼らの間には 淡い色の髪をした女性が二人、震えていた。
「 やあ 怪我はないかい。 」
「 ・・・ え ええ ・・・ あの ジョー いえ 009は 」
「 ああ ぼくらには加速装置があるからね
岩盤崩落をみてすぐに ヘレンとビーナ そして博士を
ドルフィンの中に運びこんだんだ 」
「 そ 生身さんにはちょいと難儀じゃん? 」
・・・・ あ〜〜 そりゃあ ・・・
瓦礫だらけ土埃だらけの空間に 違った色の空気が流れた。
おい〜〜 そりゃマズいぜ 009〜〜
ったく〜〜 空気読んだら?? あ もう死語かなあ
言うてええコトと あかんコト、わからへんのかいな
・・・ このニブチンが!
<オトナ>達はそれぞれぶつくさ言っていたが
当のご本人は なにも感じていない ・・・ ふうに見えた。
「 ・・・ あ そ そう ね 」
「 003のさ 咄嗟の通信がなかったら マジ ヤバかったぜ 」
「 002とぼくでも ギリだったからね〜
さすが003だね 」
「 ・・・ そ そう ・・・? 」
「 きみは? 大丈夫だった? 」
「 ・・・ え ええ ・・・ 005が庇ってくれたの 」
「 そっかよかった ・・・ あれ その手は? 」
「 え? ・・・ あら どこかで打ったかしら 」
003は 初めて袖口に血が滲んでいることに気がついた。
「 ! すぐに手当てを! ほら 急いで 」
009は すばやくハッチから出ると瓦礫を飛び越え彼女の側に来た。
「 あ ・・・ え 」
「 おいで 」
彼はためらいもなく彼女を抱き上げた。
「 博士〜〜〜 003が怪我を・・・すぐにお願いします 」
「 あ ・・・ 」
009と003はたちまちドルフィン号の奥に消えた。
「 ほ・・・ これで失地回復 かね 」
「 うん 彼女は優しいから ちゃんとわかってるよ 」
「 ふん アイツがニブすぎるだけだ 」
「 まあま ええことやん 」
混沌とした状況の中でも 仲間たちは表情を緩め
雰囲気は和やかになっている。
そんな中で ― < 異邦人 > の二人は文字通り
違う世界で身を寄せ合っていた。
「 ・・・ ねえ あの二人、いい雰囲気ね 」
妹は姉に ひっそりと囁く。
「 ・・・ええ ・・・でも 私 ・・・ 好きなの 」
「 想うのは勝手だけど 諦めたら? 」
「 でも ・・・! 」
「 あの二人の絆には 割り込めないわ。 」
「 でも でも 好きなの 大好き・・・」
「 ・・・・ 」
ビーナは 泣き出しそうな同じ顔に黙って首を振った。
「 お姉さんが辛い想いをするだけ よ 」
「 そ それでも いいわ 」
「 そこまで想っているなら ― 覚悟をきめることね。
どんな時にも どんな状況でも 彼を愛する って 」
「 勿論よ。 だって 初めて好きになったのよ。 」
「 ・・・ 」
「 ビーナ。 貴女にも熱い想いをかけるヒトが
現れますように ・・・ 」
「 ヘレンお姉さん ・・・ 」
「 ! ・・・ ああ ・・・ ビーナ あなた 」
ヘレンは 妹の心を通り過ぎた姿に 驚いた。
「 その人 ・・・ いったいいつから ・・・? 」
「 ・・・ お姉さん ・・・ 」
ビーナは 姉に薄い儚い笑みを見せた。
「 私も 初めて好きになったヒト よ
銀色の髪の ・・・ 私の愛したヒト 」
「 ・・・・ 」
妹は 姉の一途な目の光を そして 姉は 妹の暗い瞳を
息を呑み見つめていた。
だって ― 彼が すき。
「 おうい 出発するぞ。 中へ入って 」
「 ・・・ あ はい。 」
「 ・・・ 」
中からの声に促され 姉妹の姿は船内に消えた。
― そして数分後。
ドルフィン号は岩盤の隙間を粉砕しつつ 地底へと降下し始めた。
その後を ・・・ 黒い大きな物体が音もなく追撃してゆく。
かなりの大きさなのだが 巧みに一種のステルス加工がしてあり
ドルフィン号のレーダーには そして 003の <網> にも
感知することができなかったのだ。
ほぼ機械体ばかりが動いている内部では 数名のニンゲン型が
指揮・操作をしている。
オトコがじっと前を見つめている。 身体は斑模様だ。
パイロット席のようだが 実際に操縦はしていない。
ふふん ・・・ 小ざかしいヤツらめ ・・・
なかなかやるではないか
さて この後 どういう展開になるか
楽しみだ ・・・
オトコは隣をちらり、と見た。
「 ― ダイナ 姉たちが心配か 」
「 ・・・ は はい ・・・ 」
助手席の少女は ぶるりと震えた身体を無理に抑えた。
「 これはお前たちの解放につながるのだからな。
わかっているだろうな? 」
「 は はい ・・・ 」
「 そのために多少の犠牲は覚悟してもらおう 」
「 ・・・ は はい ・・・ 」
多少 ・・・ ですって?
・・・ やっぱりそうなのね
お姉さん達のいう通りだわ
ダイナと呼ばれた少女は 怪異な容ぼうのオトコの隣で
小刻みに震え続けていた。
オトコの名は バン・ボグート。 またの名は 三友光学社・社長。
地下帝国を根城に 地上進出を狙うBGのこの地でのボスである。
************
ザ ザザザ −−−−−−
黒い波が 緩やかに寄せまた引いてゆく。
光のない岸辺に 赤い服の人々が折り重なって倒れていた。
「 ・・・ う ・・・・ 」
淡い髪の少女が 呻き声をあげ身を動かした。
白いコートはひどく汚れていて裾が ぼろぼろだ。
「 ・・・ここ は? ・・・ ああ 爆発 があって ・・・ 」
彼女は ゆっくりと起き上がった。
「 ! ヘレンお姉さん! 」
パンツ・スーツの女性が 彼女のすぐ側に倒れている。
「 ・・・ ああ 大丈夫、息はあるわ ・・・
お姉さん ・・・ ヘレンお姉さん 」
「 ・・・ う ん ・・・? 」
パンツ姿の女性がぼんやり目を開けた。
「 あ お姉さん 気が付いた? 」
「 ・・・ ビーナ・・・? 」
「 そうよ! ああ よかった お姉さん〜〜 」
「 ビーナ ・・・ ここは どこ?
私たち ・・・ なぜこんなところに ・・? え?? 」
半身を起こしたとき、彼女は周囲の光景に驚愕した。
瓦礫だらけの中に 赤い服を纏った人々が折り重なるみたいに
倒れているのだ。
「 だ だれ・・・ このヒトたち ・・・
私 ・・・ いったいどうしたというの?
今まで なにをしていたの・・・? ああ アタマが ・・・・ 」
彼女は再び呻き声をあげ アタマを抱えた。
「 しっかりして・・・ 私が分かるわね? 」
「 ・・・ ビーナ 勿論よ。 ああ でも ・・・
私 どうしたのかしら ずっとなにか煙の中にいたみたい・・・ 」
ビーナは姉の側に寄ると低い声で語りかける。
「 ヘレンお姉さん。
お姉さんは 長い間 BGのマインド・コントロールを
受けていたのよ 」
「 ま いんど・コントロール ですって? 」
「 そうよ。 お姉さんはそれを自分から進んで 受けたんだわ 」
「 え な なんですって???? 」
「 ええ なにもかも・・ 私たちの解放のため よ。 」
「 解放 ・・・ あ。 ああ あああ 」
ヘレンは いきなり顔を歪め呻き声を上げた。
手で顔を覆うこともせず 手放しで泣き呻く。
「 ― 思い出した のね ・・・・ 」
「 ・・・ ああ あああ そう よ そうよ
私は 私たちはザッタンの支配下から抜け出して
そして そして − 地上に出る! そのために 」
「 そうよ。 そのために って お姉さまはBGに協力したのよ 」
「 ― ええ。 でもね ビーナ。
私が本当に望んでいたことは
」
「 え ・・? 」
「 私が望んでいたことは 私達姉妹の解放。 それだけだったわ・・・ 」
「 お姉さん ・・・ 」
「 ねえ 教えて。 今までのこと 全部。
いいことも悪いことも 全部。 真実が知りたい! 」
「 わかったわ ・・・ 手を 」
「 ええ ・・・ 」
そっくりな面立ちの姉妹は 向き合って手と手を合わせる。
そして − ほんのしばらくの間で 姉妹は全ての情報を共有したのだ。
「 ― そう なのね ・・・ 」
「 ええ そうなの。 」
「 ! ・・・ アフロ達から! 」
「 え ああ 地下に残してきた妹たち・・・ 」
彼女たちの三人の妹たちからもほぼ同時に連絡がきた。
それは 情報というよりも妹たちの悲鳴にも似た想いであった。
・・・ ! ああ やっぱり ・・・!
皆 ありがとう!
大丈夫よ、安心して。 すぐに助けにゆくから!
アフロ ダフネ ダイナ ・・・
ごめんね 恐い思いをさせてしまって
ヘレン姉さんと 助けるから。
「 お姉さん。 やっぱりBGは 」
「 ええ そうね。 とうとう正体を現したわ 」
「 お姉さんの推測していた通りね。 」
「 ・・・ ビーナ。 私 奴らを裏切るわ 」
「 そう言うって わかってたわ。 」
「 ありがとう ビーナ 」
「 ・・・ 」
見つめあう姉妹は 情報 と同時に それぞれの秘めている 想い も
共有していた。
「 ― わかったわ お姉さん。 あのヒトを愛しているのね 」
「 ええ。 私は 彼についてゆくわ 」
「 そう ・・・ 」
「 ビーナ。 ・・・辛い恋 ね ・・・ 」
「 私。 なにがあろうと 彼が好き。 」
「 わかったわ。 ・・・ ビーナ 貴女の想いがとどきますように 」
「 ありがとう ・・・ 」
姉妹は お互いの想いに心を熱くし そして 同時に心を痛めていた。
う ・・・ ん うお・・・? あ あああ
倒れていた赤い服の人々も 低い呻き声とともに動き始めた。
「 私は ― このヒトたちと一緒にゆくわ。 」
「 ヘレンお姉さん! 」
「 地下の事情は私の方がよくわかっている。
負けないわ。 今度は私がBGを利用するのよ 」
「 勿論 一緒に行くわ。 そして 妹たちを 」
「 ええ 私たちが心を合わせれば 」
「 負けない。 彼のために 」
「 彼のチカラになるの。 私のできる全てをかけて 」
姉妹は 力強く頷く。
「 ・・・ あ ああ ここ は 」
「 う うう ・・・! み 皆 無事 か・・・ 」
赤い服の面々は次第にはっきりと意識を回復してきている。
「 あ ヘレン! 無事だったか・・・
003?! 003 どこだ??? 003〜〜 」
「 009。 慌てるな。 全員 いるぞ 」
「 え どこに? 003?? 」
「 ・・・ 大丈夫 後ろにいるわ 009 」
「 !? あ〜〜〜 よかった!! 怪我は? 」
「 大丈夫・・・ ちょっとあちこち 擦り剥いたくらい・・・ 」
「 どこ?? 応急キットで手当てしないと 」
「 平気よ 009。 」
「 でも ・・・ ああ きみの白い手が ・・・ 」
あは ・・・ お〜 お熱いこって ・・・
やれやれ・・ ま いいってことよ
・・・ ふん。
仲間たちは ソッポを向きつつ やれやれ・・・といった顔だ。
ま いいやな。 今だけ ・・・な
彼らは年嵩の兄や 叔父みたいな気分で茶髪の若者を見守る。
当の本人は 仲間たちの視線などまるで気付かず、
そして自分のことなどそっちのけで 003の手当てをしている。
「 009。 本当にわたし、大丈夫よ。
さあ これからどうするか ― 決めなくちゃ。
そもそも わたし達、どうしてこんなトコで倒れていたのかしら 」
「 うん ・・・ それはそうなんだが 」
「 あ あの。 私が 私と妹が 全てお話します 」
サイボーグ達の前に 淡い色の髪の女性が立った。
「 ! ああ ヘレンさん。 無事でよかった! 」
009は喜びの笑顔を向けた。
「 ― 話? 」
「 はい。 これまでの経緯を。 」
「 いきさつ だって??? 」
「 はい。 聞いてください。 」
地底人の姉妹は 自分たちの故郷にやってきた侵略者、そして
自分たちを解放してくれた恩人 と思っていたことについて 語り始めた。
****************
ドガ −−−− ン ガガガガ ザザザバ −−−−
薄暗い地下大帝国は 瓦礫の山と硝煙と土煙でかすんでいた。
「 ・・・ ち ・・・! 」
「 皆 大丈夫か!? 」
「 お嬢さんたち こっちへ! 」
― サイボーグ達は結束して闘いを続けているが
戦況は 有利ではない。 いや じりじりと押されてきていた。
加えて ますます不利な状況が 展開してしまった。
「 ! ギルモア博士が〜〜〜 」
003の悲鳴があがった。
索敵し仲間達に秒単位で情報を伝えている最中なのだ。
ギルモア博士が 両手を拘束され敵方に連行されている。
「 な なんだって?? 博士は 」
「 吾輩が地下に隠してきたはず ・・・ 」
「 ともかく なんとか無事に救出しなくちゃ! 」
「 ・・・ あ あの縞々なヤツが出てきた 」
「 し ・・・ なにか言うぞ 」
― 結局 ギルモア博士 と 地底人姉妹は
人質交換 ということになった。
「 ― ビーナ! 」
敵方に進んでゆく彼女に 004の声が追った。
「 ? 」
「 必ず 助けるからな 」
「 ・・・ 」
彼女は 一瞬微笑んだがすぐに目を伏せ姉の後を歩いていった。
・・・ 泣いていた わ ・・・
その涙を見たのは 003 そして アルベルト・ハインリヒ だけ。
― 惨劇はその直後だった。
「 やっとお帰りか ― このぉ 裏切りモノどもがア! 」
バシュ −−−−−−−− !!!
「 ・・・!!! 」
ボグートの銃口の元 五人姉妹は声もなく斃れていった。
「!! な なにをする !! 」
「 くっそぉ 卑怯ものっ !! 」
「 来いっ ぼくが受けてたつ! 」
009は 真っ先に飛び出しゆく。
「 ふふふ 小僧〜〜 よかろう 相手になってやる 」
不敵に嗤い ボグートも銃を構え直し ―
「 っ!?? 」
ボグートの身体が ぐらり、とゆれた。
「 ! 今だっ 」
ヴィ −−−− !!!
009のスーパーガンに ヤツの片腕が吹っ飛んだ。
「 うううう ・・・ このぉ〜〜〜 」
瀕死のヘレンが 足元まで這い寄ってボグートの脚を引いたのだ。
バシュ バシュ バシュ !!
地底人の娘は 滅多撃ちに撃たれ ・・・ ボロ布のように散った。
「 !! 」
「 ふふん 受けて立つぞ 」
009とボグートの姿が 瞬間にかき消え ―
ぎゅ〜〜ん ぎゅ〜〜ん き〜〜〜ん き〜〜ん
独特の音と振動する空気で空間が膨れあがってゆく。
一見 なにもない空間だが ― そこでは凄絶な闘いが繰り広げられている。
「 009! そいつとの勝負は俺に ! 」
004が 憤然と立ち上がった。
「 ・・ くそ〜〜〜 加速中の彼らをどうやって
見分ければいいんだ!!? 」
耳を澄ませて ・・・ 音を聞くのよ
不意に 声が聞こえた。 ― あの眼差しを感じる。
「 !? ビーナ ?! ビーナか! 」
音よ。 音を聞き分けて 音・・・
「 よし! ・・・ 二つの足音 ・・・
一つは知っているぞ ジョーだ。 ということは
」
そうよ 知らいない方を 撃って。
アルベルト あなた・・・
あなたの最高の聴覚を 使うのよ
あなたを愛してくれたヒトがチカラを貸してくれるわ
あなたの仲間たちを 護って!
私が愛したあなた ・・・
彼の心の一番奥で 彼が一番大切にしているヒトが囁く。
「 ! ヒルダ ・・・ ありがとう
ビーナ ・・・ みていてくれ 行くぞっ 」
ヴヴヴヴヴィ −−−−−−−− !!!
004のスーパーガンが なにもない風に見える空間の一点へと発射された。
・・・・ ド ・・・サ ッ !
突然空間から まだら模様のオトコが倒れ出てきて ― 屍となり転がった。
シュッ ・・・ 茶髪の仲間が空間から現れた。
「 あ りがとう ・・・ 004
でも どうして? 加速中なのに 見えたのかい 」
「 ふん ・・・ お前とは長い付き合いだ
お前の 音 を知っていたのさ。 だから 違う方を 」
「 そっか でも もしコイツに両腕があったら ・・・ 」
「 ・・・・ 」
004は ぽん と 009の肩を軽く叩いた。
行こう! うん。
サイボーグたちの 反撃が始まった。
*************
「 はははは ここはすでに成層圏だ ! 」
スカールとの最後の勝負 ― それは魔人像の中だった。
そして 009 は絶体絶命の危機に陥っていた。
ぐ ぐぐぐぐ ・・・
スカールの腕が首に喰いこみ 009の意識は霞み始めた。
「 ・・・ く ・・・・ ううう ・・・ 」
もうダメだ ・・・ と視界も暗くなって来たとき。
だめ! 諦めないで!
私がチカラをあげる!
目の前に 少し哀し気な微笑を浮かべた顔が 見えた。
「 ・・・ う あ・・・? へ ヘレン ・・・? 」
そうよ! 死んでは だめ!
ずっと一緒にいたのよ、 さあ
ヤツの腕を 緩めるのよッ
「 ・・・ ぐ ぅ 〜〜〜〜 」
彼の中に 暖かい力が蘇る。
淡い色の髪をゆらし ヘレンが、いや
ヘレンの強い思念が ジョーに最後のチカラを与える。
「 ・・・ く そ ぉ〜〜〜〜 ! 」
ぐぎ。 ヤツの腕の間に指をこじ入れる。
ジョー !
今よっ ほらっ!
懐かしい声が 彼のアタマの中に響く。
「 ! ゼロゼロスリー ・・・ フランソワーズ!! 」
チャンスだわっ
ジョーなら できるわっ さあ!
彼の愛する女性が 新しい力を注いでくれる。
「 ・・・ う うううう ・・・・ !!! 」
ぐうう −−−−−−− !!!
「 生きるのよ ジョ― 」
最強のエネルギーが飛んできた。
「 ? だ だれ・・・ 」
「 さあ 生きて 私の息子! 」
「 ・・・ お か あ さん ・・・ !!! 」
ダア ッ !!!
009は 決死回転、 スカールの魔手から脱することができた。
― しかし。 それは勝利への道 とは言えなかった。
三機の脳髄は 慌てていた。
「 な なぜだ??? アイツの周りには強力な なにか がある! 」
「 バリア ・・・ よりもとんでもなく強い・・・ 」
「 くぅ〜〜〜 我々のチカラが 跳ね返されるッ 」
「「 「 こんなことは ありえない ・・・ !!!! 」」」
取り澄ましていた頭脳は 明らかに狼狽えていた。
ぐわ −−−−−−−−− ん ・・・・・ !
宇宙空間で魔人像は 音もなく崩壊した。
う わああ〜〜〜〜〜〜〜 ・・・ !
≪ ・・・ ああ これで もう いい ・・・ ≫
≪ すまねーな 009 ≫
≪ なんで ・・・ さあ 帰ろうよ 地球へ 002 ≫
≪ あ〜 ・・・ 落ちるなら ≫
≪ ああ 地球 だなあ ≫
≪ 一緒に 帰ろう ≫
≪ ん ・・・ ≫
流れ星となり落ちてゆく時 黒髪の女性の思念が009に呼びかける。
生きて ジョー ・・・
生きて 戻るのよ 愛しい人の元に
ほら あのひとの処にもどるのよ
お前を愛しているヒトの腕の中に
お前が愛しているヒトのところに
さあ お母さんがチカラをあげる。
ジョー ジョー ジョー !
死んではだめ 私の 私の愛しい息子
ジョー。 さあ 帰りましょう
「 ・・・ ああ お かあさん ・・・ 」
「 ジョー −−−−−−−− ! 」
熱く身体が燃え薄らぐ意識の中 愛しいひとの叫びが聞こえた。
、 ・・・ 呼んでいる ・・・ ぼく を
ああ ぼくは 還らなければ・・・!
その悲痛な叫びを目印に その涙を乾かすために
いとしい・いとしい人の元へ
彼は地上へと降りていった。
*********************** Fin.
************************
Last updated : 05,11,2021.
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***************** ひと言 *************
残留思念〜〜〜 御大のお作によく出てきますよね☆
えっと ・・・ 最後の最後だけ 平ゼロ・フランちゃ〜〜ん♪
だって あのシーン 大好きなんだも〜〜〜ん (*^_^*)
長々お付き合いくださった方がいらっしゃいましたら
本当に ありがとうございました <m(__)m>